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カナイケイスケ

サーカス・アーティスト「金井ケイスケ」、またはパフォーマー「ケイスケ」のページ

2007 11/02

ポールバカの夢

久しぶりにヤンから連絡があった。                                                                   
ヤンとはサーカス学校で同級生だった。彼はカンヌの近くグラース出身で、近所のサーカス学校でこの道に目覚めた。                               
学校にいた頃、学生課の前に張られるパフォーマー募集の広告を見つけては、一緒に簡単なショーを創ったり、学内でちょっとした研究発表をした仲だ。ウチの目の前のアパートに住んでいて、いろんな酒も飲ませてくれた。夏場には欠かせないマルセイユのお酒パスティスとオリーブをつまみながら、練習後にお互いの夢を語ったのも懐かしい。                                               
専門はチャイニーズポール。簡単に言ってしまうと、4メートル程度の鉄のポールに絡まりながらアクロバットをするサーカスのテクニック。                     
練習はいたって簡単。                                   
ポールに登り、しがみついてポーズを決め、疲れたら降りる…。                                                  
毎日そんな風にヤンは登って、しがみついて、ポーズ                        
登ってしがみついて、ポーズ                         
登ってしがみついてポーズ                          
ノボッテシガミツイテポーズ                         
ノボッテシガミツイテ宙ガエリ                        
ノボッテシガミツイテ…                                        それを二年半のあいだずっと繰り返していた。                                                              
そのヤンが出ているZanzibarの最新作Cirque en cavaleをパリ郊外アントニーに観にいった。                                                            シルクZanzibarのリハーサル風景                               
thumb_1193955436.jpg                                                                             
空中ブランコ、ジャグラー、逆立ち、アクロバット、ブレイクダンス、ハンドバランスなどのナンバーのレヴェルも素晴らしく、番組の間ごとにクラウンが出てきたり、他のアーティスト達の寸劇もあり、テンポよく進んでゆく。
伝統サーカスの見せ方そのままなのだけれど、アーティストそれぞれの演技に無理がなく、クラウンのナンバーではハラを抱えて笑わせてもらった。                                                                          
ヤンの出番がやってきた。                                       しょっぱなから、チャイニーズポールの上でサルト(宙返り)…。
ポールに登ってしがみついた状態から前方宙返りをして、空中でもう一度ポールをつかむ難易度の高い技。                                                      学校に居た時はこの技がまだ安定していなくて、よくポールを掴みそこね、下の練習用マットにズボッと落下していたのを覚えている。                                 
この技、着地に失敗すると捻挫したりひどい時は骨折する。
本番はみんなマットなんか置いてないし、怪我したアーティストを見た事あるから、こっちもドキドキだ。                                                      その技を、ヤンは本番しょっぱなで毎回やっている。                        
それをあっという間に決めて、その後も学校の練習ではやっていなかった技を次々に見せる。
そして最後はポールに登った状態で、落下する帽子に追い付いてつかまえる一瞬の技。            僕は気がついたら、特別ボーナス付き百二十点満点拍手をヤンに捧げていた。                                                    
彼は、決して器用なテクニシャンタイプでもなければ、華麗なスタイルをもっているわけでもない。努力の人ではあるけれど、それだけでもない。じゃあなんだ…? 
言ってしまえばチャイニーズポールバカ。                                    
バカはバカなりに、失業していた数年間も、いつでも練習できて生活費もあまりかからない、リヨンの近くのサーカスの敷地でキャラバン生活をして毎日ポールに登っていたらしい。
逆に言うとそれしかしていなかった。
今ではそのサーカスの舞台に立っている。
本番があっても、今でも午前中は毎日ポールに登っている。                                                
そんなポールバカには、人も寄ってくる。                       
ヤンの行く先々についてきて、キャラバンに暮らしながらチャイニーズポールをヤンに教わっている若者、キャラバンで紹介されたヤンの奥さんで小学校の先生をやっているソフィー、そして彼女が身ごもっているヤンとの子供。                                      
今ヤンと酒飲んでも、昔のように夢は語らない。                                                                
そもそもヤンの夢は何だったっけ?                                                                                 
まずは”登ってしがみついてポーズ”を続ける、早い話しがチャイニーズポールを続けることだろ。

そして家族をつくることが彼の夢だったような…。
                                                                                                                                       

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