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カナイケイスケ

サーカス・アーティスト「金井ケイスケ」、またはパフォーマー「ケイスケ」のページ

2007 04/09

フランスの香り

フランス産のフロマージュやワイン、食材に独特のこだわりの風味や味があるのと同じように、それらの食材を食べた人間の身体を通して、生産されるオナラの匂いにも独特の香りがある                                                                             初めてフランスのその香りの違いに気づいたのは、サーカス学校の同窓生達とツアーでまわったサーカス「シルク・トレーズ」の公演中の事だった。                                                       そのシーンは僕たちの中では「formi(アリ)」と呼ばれていて、その名の通りみんなで隊列をつくりアリのように進んでいく。                                                          背中を丸めていたり、四つん這いになったりしながら、前のヤツのおしりが自分の頭の前25センチぐらいのところにあって、自分のおしりのすぐあとには、また誰かの頭がある、という具合で歩いてゆくシーンだ。                                                そして僕はそのメンバ-14人の隊列の中でも後ろの方にいた。                                              ある時、公演が20回を超えた頃だろうか。                                                        その「formi(アリ)」のシーンでいつものように隊列を組みながら歩いていたとき、前から強烈な香りが漂ってきた。                            こ、これは、オナラだー!と心の中で叫ぶが、他の出演者にも、ましてやまわりの観客にもいっさい僕の心の叫びは聞こえない。                                                         一瞬なにが起きたかわからなくなってめまいを覚えるほどの濃い香り…。日本でも嗅いだ事がないぐらい鋭く、どこかあたたかく、濁流のように鼻から流れ込んでくる。                                                          今すぐにでもそこから脱出したかったが、今は本番、芸のためなら呼吸も止める。しかたがないので呼吸を止めた。                                   そして後戻りもできないまま、その「香りの爆心地」へアリの行列として向かって行く…。                                     途中他の出演者の顔が浮かび、頭の中で犯人探しをはじめてしまう…。                      (い、いかん、演技に集中しなければ…)  と、頭の中の妄想は追い払ったものの、身体は限界へと向かっていた…。           (だ、だめだ、 これ以上呼吸は止められない…)                                           「ぶはーっ!」しょうがないので口で呼吸をするが、どうしても鼻に香りがやってくる。ほっぺたの筋肉が頭の指令に逆らって歪み、ひきつっていくのが感じられる。                                       しまった、完全に汚染地域にはいってしまった…。どうしようもなくひどい気分だし身体に力が入らない…。どうやら直径13メートルの円形ステージにかなりの範囲で広がってしまったようだ。香りの犯人に対してあきれるどころか憎しみさえ抱いてしまう…。                                                     10分ほどの「formi(アリ)」のシーンを終え、舞台裏に戻ったときに吸った空気のなんとうまい事。空気がこの時ほどおいしく感じた事はない。
                                             カーテンコールを終えた後の楽屋は、当然この事件の犯人探しで大騒ぎ。他の出演者にとってもこの匂いは強烈だったようだ。普段から言いたい事いっている仲間だけど、この時ばかりは事の重大さに気づいたのか、誰も自首してこなかった。                                                   結局犯人は見つからなかったが、この日を境にこの『本番中オナラ事件』は続いてゆく。                                    ほぼ毎回のごとく、誰かがこの「formi(アリ)」のシーンでオナラをする。しかも強烈な香り。きっと四つん這いの姿勢がリラックスしすぎて良くないのかもしれない。                                しかしこの匂いには共通点がある。 そしてある日自分も同じ香りのオナラをしている事に気づいた(本番中はぼくはしていません…、一応)。                                      当然ツアーの間は、専門の料理人達がいて、色々ご飯を作ってくれる。                    なので早い話しがみんな同じ釜の飯を食っていて、そこから産まれる香りも同じであることは間違いない。                         そして、もっとも強い匂いを発するのはハード系のチーズ。特にフランスのフロマージュ「コンテ」や「カンタル」! しかも楽屋にも何種類ものフロマージュとバゲット(フランスパン)が常備されていたし、食べる量も朝から晩まで半端じゃなかった。           チーズもワインもショコラも胃の中でごちゃ混ぜになっているんだから仕方ないか…。                                               公演を60回超える頃になると、それぞれがオナラをしてしまった後は、自己申告をするようになっていく。しかもそんなことに怒るヤツは誰もいない。みんなのほとんどが、そのシーンでのオナラ経験者になってしまったのだから。                     そしてその香りは出演者もスタッフも、同じ旅をしているもの同士、みんな知っている匂いになっていた。                                                                   今でも、ハード系のチーズ、特にコンテやカンタルを食べると「シルクトレーズ」の公演を思い出す。                                                       thumb_1176072525.jpg

こないだ近所のマルシェで買った、ヤギの生乳でできたチーズ「シェーブル」の食べかけ。 これも食べ過ぎたら、きっと強烈な香りのヤツが後で出てくるでしょう。
本番前は控えよっと。

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